中国、アメリカの変遷から考える日本のソーシャルレンディング

今回は、日本のソーシャルレンディングの特徴を少し違った角度から解説していきます。アメリカや中国のソーシャルレンディングサイトはその文化的、経済的背景から歴史的に案件の特性が偏っていますが、日本も特有の事情を織り込んで独自の変遷を遂げています。どのようにその市場規模を拡大したのか、紐解いていきましょう。

海外のソーシャルレンディング事情

ソーシャルレンディングは現在、その利便性と収益性の高さを理由に世界各国で非常に大きな盛り上がりを見せています。しかし、実は現在展開されているソーシャルレンディングサービスは、それぞれの国で少しずつ成り立ちや歴史の変遷が異なり、また運営を規制する法律も各国様々であるため、実態としては微妙にサービスの内容や存在意義が異なっています。

その中でも海外のソーシャルレンディングの主な特徴を挙げると、やはりP2P(個人間)レンディングの比率の高さが目立ちます。アメリカやヨーロッパ、中国のソーシャルレンディングサイトでは、消費者自身が借り入れを目的として投資家を募集しています。

世界初のソーシャルレンディングサイトはイギリス発祥のzopaですが、こちらも2005年の創業時からP2P(個人間)レンディングに特化して運営を行っています。アメリカと中国については、後ほど詳細に述べますがこちらもソーシャルレンディング黎明期を支えたのはP2P(個人間)レンディングだと言われています。

P2P(個人間)レンディングとは

では、そのP2P(個人間)レンディングとは一体どのようなサービスなのでしょうか。P2P(個人間)レンディングは、ソーシャルレンディングの概念を理解している方であれば、解説は不要かもしれませんが、非常に画期的な仕組みで資金を必要とする消費者のコストを大幅に下げる画期的な社会的にも意義深い事業です。

まず、単語の意味から解説すると、P2PとはPeer to Peerの略語です。Peerとは「同等の」という意味の英単語で、個人間での取引を行う際によく利用されるワードになります。この個人と個人を、インターネット上で結び付け、お金の貸し借りをさせるのがP2P(個人間)レンディングです。

これまで、奨学金を必要とする学生や、家や車を購入する予定のあるサラリーマン、独立開業を検討している士業の方など、資金需要がある一般消費者が資金を工面する方法というのは、銀行や消費者金融など各国で選択肢が限られていました。選択肢が少ないということは、当然借り入れを行う際の金利が高く、これまで借り入れを行う消費者に大きな負担がのしかかっていました。

P2P(個人間)レンディングであれば、既存の金融機関で必要な手間や物理的な設備にかかるコストが削減できるので、消費者は安い金利での借り入れが可能になります。また、これまで既存の金融機関が牛耳っていた融資による収益が、資金に余裕のある一般個人投資家にも広く分配されるようになり、資金の出し手、受け手共に大きなメリットが受けられます。

融資を受けるまでの流れとしては、まず借り入れを行いたい個人が、各ソーシャルレンディングサイトはに金利などの条件や借り入れの目的などを掲載し、融資の募集を行います。この募集を行う前の段階で、仲介するソーシャルレンディングサイトが借り手の返済能力等について審査を行うケースもあります。投資家は、掲載された条件を読み、満足のいく収益が得られると判断すれば実際に融資を実行します。この際、1名の投資家が募集金額のすべてを出資する必要はなく、募集金額の一部でも構いません。P2Pとは言え、複数の投資家が1名の個人に融資を行うのが通常のケースです。

借り入れを受けた個人は、募集要項に記載した金利を決められた期間ごとに投資家に支払い、満期が来れば元本も返済します。返済が滞ってしまうと、事前に設定した担保や保証会社などを使って投資家に金利や元本が返済されます。仮に担保が設定されていなかったり、担保を売却しても元本の返済額を補てんできない場合は、投資家が損失を被ることになります。

アメリカのソーシャルレンディングの歴史

世界中のソーシャルレンディングの中でも独特の歴史を辿っているのがアメリカのソーシャルレンディングサービスです。アメリカのソーシャルレンディングでは、前項で詳しく解説した、P2P(個人間)レンディングが主流なのですが、これには理由があります。

アメリカでは、まず2006年にProsperというソーシャルレンディングサービスが国内で初めて操業を開始します。その後Prosperに続いて2007年に現在はニューヨーク証券取引所に上場するLending Clubがサービスの提供を開始します。その後両社はアメリカで市民権を得て、市場規模、市場シェア共に大きく伸ばしていきます。

この二社の成長の背景には、ペイデイローンと呼ばれる、アメリカに古くからある消費者への貸金サービスの存在があります。

ペイデイローンとは

ペイデイローンとは、消費者の給与を担保とした融資のことを指します。payday(ペイデイ)とは日本語で給料日という意味です。アメリカの企業では通常、月に2回給料日があるので、融資期間は2週間であることが多いです。

このペイデイローンですが、主にクレジットカードを発行できないほど与信の低い低所得者や、クレジットカードの枠を使い切ってしまった消費者に利用されています。アメリカでは、クレジットカードの発行やその利用上限枠の決定に、クレジットスコアという指標が大きな影響を与えています。

クレジットスコアは、過去のクレジットカードの利用履歴や家賃の支払い履歴、ビデオレンタルの利用履歴などから消費者の経済状況を判断し、総合的に決定されます。余談ですが、クレジットスコアが低いことが原因で就職試験に落ちたりすることもあるようです。クレジットスコアが低く、クレジットカードを満足に利用できないユーザーはペイデイローンのような街の金融サービスに頼るしかないのです。

しかし、ペイデイローンは法律的にグレーな融資サービスで、非常に高い金利を徴収することで悪名高いローンです。アメリカは各州の法律によって融資を行う際の合法的な金利上限が異なるのですが、おおよそ10%程度だと言われています。そんな中ペイデイローンは大幅にその金利上限を超えた条件で貸付を行っており、時にその暴利は700%や800%に達することもあるようです。

なぜペイデイローンが摘発されないのか、疑問に思う方も多いと思いますが、ペイデイローンでは形式上金利0%で貸付を行い、その元本の10~30%の金額で商品券を同時に売りつけることによって法律の穴をかいくぐっています。例えば、100ドルの融資を受ける場合、消費者はペイデイローンの運営会社から100ドルの現金とセットで30ドルで商品券を購入させられます。しかし、この商品券は名ばかりのもので、実際には利用できないただの紙切れです。消費者は給料日が来ると、使用できない商品券に払った30ドルも含めた130ドルを返済する必要があります。

700%や800%もの金利で貸付を行っても、低所得者に分類される借り手から回収できないのではないか、と心配になってしまいますが、返済方法も秀逸です。借り手は融資を受ける際に、ローン業者に銀行口座へのアクセス権を渡すか、返済額分の小切手を切ることを要求されます。有無を言わさず、期日になったら回収を行うことが可能な体制を取っており、デフォルト率は3%程度とも言われています。

また、融資額の上限も5万円程度が上限で、それほど大きな金額を貸し付けているわけではありません。ペイデイローンについて、その特徴を改めて一言で申し上げると、「超短期で少額を高利で融資するグレー業者」といった表現になるでしょうか。

これだけの高金利にも関わらず、アメリカ人の20人に1人はペイデイローンを利用したことがあると回答しており、実際に利用が進んでいます。それだけアメリカで消費者が必要な資金を調達する手段が無かったということなのでしょう。

”大きな問題は、現金と共に手渡される商品券が、実際には使えないただの紙切れであるということ。つまり、実質的には債務者は、100ドルの金融を得るために、130ドルの支払いをするという内容がペイデイローンです。アメリカでは2週間ごとに給与が支払われるという形態をとる企業が多いため、ペイデイローンの貸付期間は2週間までというものが主流とのこと。つまり、2週間で30%の金利ということで、年利に換算すると780%という法定金利をはるかに上回るとんでもない暴利をペイデイローン会社はむさぼっているというわけです。”
引用元:Googleが年利数百%にも達する低所得者向け金融商品「ペイデイローン」の広告を禁止へ
URL:http://gigazine.net/news/20160512-google-ban-payday-loan/

そこで登場したのが、前述のProsperやLending Clubなどのソーシャルレンディングです。アメリカでソーシャルレンディングが急速に市場規模を拡大したのは、ある種ペイデイローンによって「高金利・短期」の融資文化があったからだとも言われています。ペイデイローンよりも安い金利で融資が受けられるとの評判を受け、一気に融資を希望する消費者がソーシャルレンディングのマーケットになだれ込んできました。投資家サイドにとっても、これまでペイデイローン業者が違法なスキームで融資を行い、得ていた暴利の一部を受けられるようになりましたので、貸し手の数も急拡大しました。

こういった変遷を経て成長したアメリカのソーシャルレンディングは、今なおその融資案件の多くが個人向けの融資案件となっており、純粋なP2P(個人間)レンディングにより近い状況となっています。

中国のソーシャルレンディング事情

一方で、ヨーロッパ各国やアメリカと比較して、企業向けの融資案件を取り扱うことが多いのが中国のソーシャルレンディング市場です。これにもアメリカ同様に経済的、文化的な土壌が大きな影響を与えています。

現在、中国のソーシャルレンディング全体の市場規模は世界最大の5兆円とも言われており、特にここ数年で爆発的な成長を見せています。その要因としては先進国の仲間入りを果たすほどの経済の成熟度合が挙げられ、高い利回りを求める投資家と返済余力のある借り手が爆増しています。

中国では長年、金融機関と言えば中国工商銀行や中国建設銀行などの政府主導の組織という状況が続いており、これが中国経済に大きな捻じれを生んでいました。彼らが相手にするのは、公的なプロジェクトや政府と関わりの深い大企業のみで、民間の中小企業などは融資を受けようにも貸し手がいないという事態を生んでいたのです。

そこにソーシャルレンディングという仕組みが持ち込まれ、現在は中小製造業からIT企業に至るまでの様々な中国企業がソーシャルレンディングを活用して融資を受けています。こういった背景から、中国のソーシャルレンディングでは企業向け融資の比率が高いのです。

しかし、近年は都市部に住む若者を中心に個人の資金需要も高まっており、P2P(個人間)レンディングの割合は高まっていくことが予想されます。中国に限った話ではないのですが、GDP成長率の高い国ではその成長率が融資金利を相殺する可能性が高く、デフォルトリスクは低減します。例えば中国であれば、年間6%ほどのGDP成長が続いていますので、10%の金利で融資を行っても経済的な負担は実質4%と考えることができます。そういった意味合いに置いても都市部の若者は、積極的にソーシャルレンディングでの融資を利用しているようです。

ただし、中国のソーシャルレンディングには大きな問題があります。それはデフォルト率の高さです。GDP成長率が高いことによってデフォルトを免れている個人や企業がいることは事実だと思いますが、詐欺や夜逃げを働くケースも多く、中には運営会社自体が詐欺まがいの行為を行っていたという事例もあります。Ezubaoというソーシャルレンディングサイトは、テレビなどで大々的に広告を打ち、ユーザー数を増大させていましたが、架空の投資案件を利用して9,000億円もの詐欺を行いました。運営会社自体が詐欺を行うケースなどは問題外ですが、実際に借り手の審査がそれほど正確ではなく、本来であれば運営会社が弾かなければならない返済可能性の低い募集案件などを掲載してしまっていることは由々しき問題です。

”中国最大のP2P金融プラットフォーム「e租宝(Ezubao)」が76億ドル(約9185億円)を詐取した疑いで幹部21人が逮捕された。被害者は中国全土の投資家90万人と見られており、被害額、被害者数ともに中国史上最大。被害者数では世界最大のポンジ・スキーム詐欺となる。(中略)e租宝の場合、投資利回り9-15%を謳っているものの、投資対象の事業の95%は偽物で、内情は新規投資家から掻き集めたお金を既存投資家に回すという自転車操業状態だった。詐欺で得られたお金は、元会長や会長などの個人資産などに悪用された。被害者数(90万人)では世界最大のポンジ・スキーム詐欺となった。”
引用元:中国最大のP2P金融プラットフォームが1兆円詐欺。
URL:http://officelife.tokyo/A/fintech/social/133

日本国内のソーシャルレンディング事情

翻って、日本のソーシャルレンディングの歴史を遡っていくと、実は2008年ごろの黎明期はアメリカと同様、P2P(個人間)レンディングプラットフォームの色が非常に強く、逆に企業向け融資案件や不動産案件などはほとんど募集が行われていませんでした。現在は個人向け融資案件の募集は皆無なので、今とはかなり状況が異なっていたようですね。

個人向け融資案件が国内で長続きしなかったのにはいくつかの要因があるのですが、中でも最も大きいのが消費者金融の存在です。日本はアメリカや他の世界各国と異なり、非常に利便性の高い融資期間が全国各地に存在します。ペイデイローンのような高利貸しが介在せずとも、資金需要があれば中程度の金利で個人が融資を受ける土壌があったのです。

ソーシャルレンディングも多少は健闘したようですが、ある種完成された個人向け融資期間である消費者金融よりも著しく良い条件で貸出を行うのは難易度が高く、また信用情報の精査や消費者からの回収なども長年のノウハウを持つ消費者金融に劣るケースが多く、本格的に立ち上がるには至りませんでした。

また、総量規制の問題にも影響を受けたと言われています。総量規制とは、貸金業法によって定められているルールで、個人の借入総額が、原則、年収等の3分の1までに制限されるという規制を指します。消費者金融等で既に借り入れを行っている消費者が、ソーシャルレンディングで更に融資を受けようとすると、総量規制に抵触してしまう可能性が高く、借り手の獲得が進まなかったようです。

その一方で、企業向け融資案件や不動産融資案件に関しては大きく市場を拡大していきました。旧来の金融機関では機動的に対応できない案件や、リスクを取り切れない案件を各ソーシャルレンディングサイトが丁寧にソーシングし、また事業者側も地道に信頼を積み上げた結果、業界全体を見てもデフォルト率はほぼ0%に近く、期待利回りも7~14%と今やソーシャルレンディングは非常に魅力的な金融商品となっています。

フィンテックとソーシャルレンディング

ここまで各国のソーシャルレンディングの歴史を追いながら、日本のソーシャルレンディングの現状について解説してきましたが、ここからはソーシャルレンディングの将来について簡単にお話したいと思います。

国内では、P2P(個人間)レンディング型、個人向け融資案件の募集がほとんど行われていないことは前述の通りですが、今後は徐々に個人向けの機運も高まっていくことが予想されています。そのためのカギは、AIなどの新しいテクノロジーです。fintech(フィンテック)と表現されたりもしますが、これはfinanceとtechnologyを足して作られた造語です。

fintechがソーシャルレンディングでどう活かされるかというと、与信の審査に関する業務プロセスを代替することを期待されています。やはりデフォルトを起こせば利益率は下がりますし、期待して投資を行った投資家が損失を被り自社のプラットフォームから離れてしまうリスクがあるので、融資の可否や条件を決める審査にはどのソーシャルレンディングサイトも工数をかけていますし、人員を割いています。このコストがかかる業務を、テクノロジーによって自動で行うことが可能になれば、ソーシャルレンディングはますます飛躍しますし、個人向け案件でも消費者金融を圧倒する金利での貸し出しやデフォルト率の低さを実現できる可能性があります。

すでにみんなのクレジットなどはこういった取り組みをいち早くはじめており、国内ソーシャルレンディングの更なる市場規模の拡大が期待されます。各社の今後の展開が楽しみですね。ソーシャルレンディングにまだトライしたことのない方は、業界が成熟し安定して良いパフォーマンスを出せるようになった今こそ始めるべきタイミングだと思いますので、検討してみてはいかがでしょうか。

”現在、当社では「人工知能に基づく自動融資審査システム」の開発に取り組んでいます。これは約1000項目のスコアリングモデルシートを作成し、ディープラーニングを用いて審査を実施するものです。個人データと過去事例をもとに定性・定量の両面から解析を行い、融資額と金利水準を決定します。
このシステムが完成すれば、デフォルトのリスクを最小限に抑えつつ、資金調達の機会を幅広く提供できるようになります。開発を担うのは、日本の金融を変えたいと意気込む当社の理念に共感してくれた経験豊富な人工知能専門技術者たちです。2017年9月のサービス開始を目指し、人員をさらに増強して開発を進めます。”
引用元:ソーシャルレンディングはC to BからC to C へ
URL:http://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NBO/16/m_credit0808/

minnano

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